朝からずっと、気づけば息をするように働いていた。
メールの返信、会議の準備、資料の修正。
どれも大事な仕事だけど、頭の中が数字とタスクでいっぱいになって、
自分が何を考えていたのかもわからなくなっていた。
そんな中で迎えたお昼休み。
正直、朝からずーっと楽しみにしていたランチタイム。
何を食べようかな。わくわく。
仲良しの大将がいるお寿司屋さん?
トマト系が美味しいイタリアン?
いや、今日はつるっとおうどんが食べたいなあ。
職場から少し歩いたところにある、
落ち着いた古民家みたいなうどん屋さん。
木の引き戸を開けると、
カラン、と鈴の音がして、ふわっとお出汁の匂いが広がる。
「いらっしゃいませ〜」
店員のお姉さんの声に誘われるように席についた。
テーブルは少し欠けていて、壁には年季の入ったメニュー表。
なんだか落ち着く。
ほどなくして運ばれてきたのは、
カレーうどんにおはぎにほうじ茶。
どれも特別なものじゃないのに、
一口食べた瞬間、思わず「うまっ」と声が出た。
外の喧騒から切り離されたような静かな空間で、
ただ黙ってごはんを食べる時間。
それだけで、
午前中の張りつめた気持ちがすっと溶けていくのがわかった。
「仕事、もう少しがんばれるかもな」
そんな言葉が、自然と頭に浮かぶ。
食後にほうじ茶を飲みながら、
カウンター越しに外を眺めると、
スーツ姿の人たちが忙しそうに行き交っていた。
私もきっとその一人だけど、
今だけは少しだけ、外の世界から離れていたい。
ほんの30分の昼休み。
それでも、この短い時間があるから、
また午後からの“がむしゃら”に戻れる。
日々の中で、ちょっと立ち止まる時間。
それが、思っているよりずっと大切なんだと思う。
お会計のときに「ありがとうございました」とお姉さんが優しくが笑ってくれた。
その声に、なんだかほっとして、
「また来ます」と自然に返していた。
美味しいランチがくれた小さな休息。
がむしゃらな平日の中にも、
ちゃんと“やさしい時間”はあるんだなと思えた午後だった。

コメント