仕事のこと、家のこと、毎日やるべきことに追われて、
「もう少し肩の力を抜いて生きたい…。」
そう思うことはありませんか?
毎日懸命に生きている中で、
「あれ?私ってなんのために頑張っているのかな」
「この頑張りの先には何があるのかな」
そんな思いにそっと寄り添ってくれるのが、
群ようこさんの小説、『れんげ荘』。
何か劇的な事件が起こるわけではなく、
ただ静かに、
でも確かに、
生き方を整えてくれる物語です。
毎日頑張っているのに、なぜか人生の迷子になっている気がする。
頑張ることに疲れちゃった。
そんな時に読みたくなる一冊。
あらすじ
主人公のキョウコは、会社勤めに疲れ果て仕事を辞め、
築40年、いや50年は軽く超えていそうな安アパート、
「れんげ荘」で静かな生活を始めます。
都会でバリバリ働くキャリアウーマンのキョウコ。
部下もたくさんいて、いつもおしゃれで流行りの服を着て、
誰がどう見てもかっこいいキャリアウーマンのキョウコ。
でも実は、忙しい毎日や理不尽な同僚、時代錯誤の接待に悩む毎日。
そんな忙しい毎日の中で、
古き良き大和撫子基質で、周りの目を気にする母とのいざこざ。
結婚もせず、子どももいない。
仕事しかしてこなかった自分のこれからの人生これでいいのか、
悩みに悩んだキョウコが出した答えが、
「仕事を辞めて月10万円で一人暮らしをする。」でした。
華やかさはないけれど、自分のペースで穏やかに過ごせる幸せな日々が舞台の物語。
散歩の途中ですり寄ってくる猫、
気ままに立ち寄る古本屋、
忙しい生活では気が付かなかった鳥の声や草の匂い、
開けるのに苦労する木枠の窓、
様々な背景を持つご近所さんとの温かい関わり…。
小さな幸せを丁寧に拾いながら暮らすキョウコの目線を通して、
「こんな暮らし方もあるよ」
「こんな風に暮らしたっていいんだよ」
と優しく語りかけてくれるような物語です。
シンプルな日常の積み重ねが心地よく、
ページをめくるたびに息がしやすくなるような、
心温まる小説です。
感想
「れんげ荘」は、「休んでもいいんだよ」と優しく伝えてくれる物語です。
仕事は充実しているし、大きな不満はないけれど、毎日目が回るほど忙しい。
もっと自分のことや、家族、
私のことを大切にしてくれる人を大切にしたい。
そんなことを考えるきっかけを与えてくれました。
読んでみて率直な感想は…。
「キョウコいいな〜!」でした(笑)
キョウコはキョウコで、悩みに悩んで1ヶ月10万円で暮らす選択をします。
それはキョウコ自身がこれまでの人生、
がむしゃらに働き、お金を貯めてきたから選択できることです。
誰にでもできる選択ではありません。
また、キョウコはとっても真面目なので、仕事を辞めてからも、
こんな生産性のない毎日でいいのかな、
人に役に立つこととか社会に貢献とかした方がいいのかな、
と悩みます。
そんなこと気にしなくてもいいのに!と思わず声に出してしまいました。
早期にリタイアできるほど頑張ったのは紛れもなくキョウコ自身。
誰にでも真似ができる訳ではありません。
誰かを騙して、とかではなく、
汗水流して頑張って頑張って貯めたお金。
仕事を辞めてひっそり暮らしても一切悪いとは思いません。
日本でしか暮らしたことのない私ですが、
日本人は真面目だなあと感じます。
有休という制度はしっかりあるはずなのに、仕事を優先して休まない。
自分の仕事はきっちり終わっているのに、同僚が帰らないから残業する。
息苦しさを感じる場面は多々あります。
仕事は嫌いではないけれど、
そういった息苦しさから逃れたいと思うことは結構ありませんか?
限られた時間の中で、
本当に自分が大切にしたいものはなにか、
本当に自分が大切にしなければならないものはなにか、
改めて考えさせられる1冊だなあと思いました。
おすすめの小説グルメ「喫茶店のブレンドコーヒー」
作中には、お隣のクマガイさんおすすめの喫茶店が出てきます。
マスターが一杯一杯丁寧に淹れてくれる香り高いブレンドコーヒー。
毎日を慌ただしく、
忙しく、
懸命に生きている中で、
たまにはほっと一息喫茶店でコーヒーを飲みながら読むのはどうでしょう。
作中のコーヒーは、キョウコが一人暮らしを始め、
「本当にこの選択で良かったのかな」と悩んでいた頃、
おとなりさんのクマガイさんに誘われて訪れた喫茶店で登場します。
喫茶店で二人、向かい合いながら、
人生と向かい合います。
温かいコーヒーと温かい小説、相性はばっちり。
ぜひ「れんげ荘」を片手にお気に入りの喫茶店に出かけてみてください。


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